外郎売の学習のために参考にしてください。
・台詞として捉えましょう。単なる早口言葉ではありません。
・目的(薬を売る)を持った行動として聞くものに働きかけてください。
・段落分けをして全体の流れを感じながら行います。
・「枝と幹」「ブレスの位置」「3つの音階」「二重母音」など意識しながら行います。
・後半は、「押韻」「掛詞」などにも注意して、テンポの変化を意識しながら行います。
・聞くもののフィードバックを受けながら間合いを取ります。
・間違えずに最後まで通すことはできましたか。
◆外郎売とは
享保三年(1718)正月、江戸森田座の『若緑勢曾我』(わかみどりいきおいそが)という狂言のなかで、二代目市川團十郎よって初演された。喉の具合が悪かった團十郎が、外郎を飲んだところ調子が良くなったことからその感謝の気持ちで創作されたといわれている。その後、天保年間に七代目市川團十郎(当時五代目市川海老蔵)が市川宗家のお家芸として選定した十八番の歌舞伎演目となる(歌舞伎十八番)。現在は十二代目團十郎が復活させたもの(野口達二脚本)が上演されている。「外郎売」と言えば、単にその劇中に出てくる外郎売の長科白を指すことが多い。
※歌舞伎十八番
『不破』『鳴神』『暫』『不動』『嫐(うわなり)』『象引(ぞうひき)』『勧進帳』『助六』『押戻(おしもどし)』『外郎売』『矢の根』『関羽(かんう)』『景清』『七つ面』『毛抜』『解脱』『蛇柳(じゃやなぎ)』『鎌髭(かまひげ)』。いずれも家の芸である荒事を基本にしているのが特色。
◆外郎売の構造
外郎売は、言語が有するふたつの要素、「意味と音」という側面が分割されつつ強調された構造をもっている。前半部分(拙者親方と申すは~万病即効あること神の如し)は、薬の由来やお店の盛況ぶり、そして、薬の効能などを筋道立てて、論理的に語っている。つまりそれは、「理性」に働きかける言葉である。後半部分(さてこの薬、第一の奇妙には~ういろうはいらっしゃりませぬか)までは、薬が効いて舌がなめらかになり、滑舌がよくなったということを示すデモンストレーションが行われるが、早口言葉を駆使しながら、言葉を音楽的に展開している。それは「感性」に働きかける言葉になっている。
前半の説明を、次の四つの段落に分けてみる。第一段落は、冒頭、「拙者親方と申すは」から「円斎と名のりまする」までで、この部分は、「名のり」。第二段落は、「元朝より大つごもりまでお手に入れまするこの薬は」から「頂、透く、においと書いて頂透香と申す」までで、これは「薬の由来」が語られる過去の話。第三段落は、「只今はこの薬、殊のほか世上に広まり」から「系図正しき薬でござる」までで、ここは「お店の盛況ぶり」と「道案内」で、現在の話。前半の最後、第四段落は、「イヤ最前より家名の自慢ばかり申しても」から「そのほか万病即効あること神の如し」までで、ここでは聴衆の前で実際に薬を飲むという「実演」という方法。外郎売の前半部分は、このように「名のり」「薬の由来(過去)」「お店の盛況ぶり(現在)」「実演」という流れで捉えることができる。
後半は、音楽性を表現するが、「さてこの薬第一の奇妙には」から「矢も盾もたまらずじゃ」までが、プロローグ。「そりゃそりゃそらそりゃ」から「花のお江戸の花ういろう」までが本編、「あれ、あの花を見てお心を」から「ういろうはいらっしゃりませぬか」までが、エピローグという流れで捉えることができる。
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